目次へ 前ページへ 次ページへ


第2 調査結果の概要

1 事件の経過及び行政対応の概要
事件の経過とそれに対する行政対応の概要は、以下のとおりである。
なお、詳細については、「参考資料3」を参照していただきたい。

(1)5年4月1日
○元県幹部、地域振興局地域政策課長に就任。

(2)5年5月
○元県幹部、商品先物取引に着手。

(3)7年4月1日
○元県幹部、商工労働部商工政策課長に就任。

(4)8年6月
○元県幹部、高知商銀から第1回目の融資を受ける。
○融資は9年4月まで計9回続けられ、金額は計5億2500万円に上る。

(5)9年4月1日
○元県幹部、海洋局次長に就任。

(6)9年10月28日~29日
○商工政策課金融班が高知商銀に対する現物検査を実施し、元県幹部に対する不正融資を把握。
・元県幹部の母親名義で、5億2500万円借り入れ(本人は連帯保証人)。
・員外貸付、貸付限度額超過、無担保。
《行政対応》
○金融班から前田商工政策課長に報告。
・前田課長はこの時に違法貸付であることは認識。
○前田商工政策課長から川村商工労働部長に報告。
・川村部長は、指導監督すべき立場にある者が弱小金融機関から違法貸付を受けているということに震えがくるようなショックを受けた。

(7)9年11月上旬
《行政対応》
○川村商工労働部長が元県幹部と面談(1回目)。
・個人的な借り入れであり公務に関係はない。
・確実に返済できるので絶対に迷惑はかけない。
・資金使途(融資した相手先)を明らかにするのは待ってほしい。
○山本副知事に川村商工労働部長と前田商工政策課長が報告。
・無担保で5億2500万円借り入れしている。
・必ず返済できると言っているが、使い道は言わない。
・県の現職幹部がこういう多額の借り入れをしていること自体が問題。
・違法貸付ということは、川村部長は伝えたように記憶しているが、前田課長は言っていないと答弁し、山本副知事は新聞報道されるまで知らなかったと答弁。
・山本副知事は、使途を明確にすることと商銀に対する指導を厳正に行うよう指示。
・この時点では、山本副知事から橋本知事には報告せず。
○川村商工労働部長から嵐人事課長、上岡総務部副部長に報告。
・川村部長は、嵐課長には3~4回は話したと答弁したが、嵐課長は、川村部長から「都築には困ったものだ、借金がある」という話は聞いた覚えがあるが、何回も詳しく聞いた記憶はないと答弁。

(8)9年11月19日~27日
○商工政策課金融班が高知商銀の本検査を実施。
・元県幹部関係の債権を第Ⅱ分類に査定。

(9)9年11月下旬
《行政対応》
○川村商工労働部長が元県幹部と面談(2回目)。
・間違いなく返済できる。県に迷惑はかけない。
・使途を明らかにすることの返事は待ってほしい。

(10)9年12月上旬
《行政対応》
○川村商工労働部長が元県幹部と面談(3回目)。
・使途を明らかにすることの返事は待ってほしい。
・このままでは辞めざるを得ない。

(11)9年12月19日
○元県幹部が嵐人事課長に退職願提出。
・退職理由「一身上の都合により」。
・海洋局長には、本人から退職願提出の件は伝えていたが、金額、借入先、借入目的等は伝えていない。(人事課長)
《行政対応》
○嵐人事課長が元県幹部と面談。
・高知商銀から5億3千万円借りている。
・複数の企業経営者に融資しているが、3月末までには返済できる。
・商工政策課長をしていたこともあり、県に迷惑をかけるわけにもいかないので退職したい。
・嵐課長は、違法融資であるとか、職の悪用という話は聞いていなかったので、服務云々ということまで考えなかった。
○嵐人事課長が山本副知事に元県幹部から退職願が提出されたことを報告。
・嵐課長が本人から聞いた内容を報告。
○山本副知事が橋本知事に元県幹部から退職願が提出されたことを報告。

(12)9年12月22日
《行政対応》
○山本副知事が元県幹部に面談。
・友人の経営する企業の運転資金として貸しているが、10年5~6月ごろまでには必ず返せる。
・企業の名前は明らかにできないが、私を信じてほしい。
・退職願を提出した理由は、現職幹部が多額の借金を背負っていること自体が問題で、県に迷惑をかけることになるから。
・山本副知事は、絶対返せるのなら返したうえでけじめをつけたらいいのではないかという話をし、本人が退職願は撤回することになった。
・山本副知事は、商銀の財務体質もかなり悪いので、この段階ではまず返さすことがベストだと判断した。
○山本副知事が嵐人事課長に指示。
・本人との面談内容を伝え、退職願を返すように指示。
・嵐課長は、この段階で解決のめどが立ったものと受け止めた。
○山本副知事が川村商工労働部長に指示。
・嵐人事課長に伝えたことと同じような内容を伝え、10年5~6月ごろまでには返すと言っているのでフォローしてほしい。
・商銀の問題については、厳正・的確に対応してほしい。
・川村部長は、地位利用ということで厳しく考えていたので、そういう判断もあるのかなあと思ったが、すぐには腑に落ちなかった。
○山本副知事から新谷海洋局長には指示も連絡もしていない。
○嵐人事課長が上岡総務部副部長に退職願の撤回の件を報告。
・上岡副部長は、退職願が撤回されたことによって処理が終わったという思いを持った。
○嵐人事課長が高尾総務部長に詳細に報告したのは10年2月ごろ。

(13)9年12月24日
《行政対応》
○嵐人事課長が元県幹部に退職願を返す。
○退職願撤回後、商工労働部は、高知商銀に対し早く回収するように指導し、元県幹部には早く返してくれるように要請してきたが、総務部との打ち合わせ等は行っていない。

(14)9年12月25日
《行政対応》
○山本副知事が橋本知事に報告。
・元県幹部が巨額の金を借りている。
・本人は返せると言っているし、決して迷惑をかけることはないということであるので、10年5~6月ごろまでに返させることにした。
・「あとは私にお任せください。」
・橋本知事は、何月までということは聞いた記憶がないが、山本副知事の安心感が伝わってきた。
・橋本知事は報告を聞いた時、特段の危機意識は感じなかった。

(15)10年3月31日
○高知商銀が金利分として1160万円を追加融資。
・この時点での元県幹部に対する債権額は5億3660万円。
・4月1日以降は金利延滞。

(16)10年4月1日
○山本副知事の後任に河野副知事が就任。
・元県幹部の問題について、山本副知事は、引継の際に人事上の問題として口頭で伝えたと答弁したが、河野副知事は、文書でも口頭でも引継は受けていないと答弁。
○新谷海洋局長の後任に森光海洋局長が就任。
・元県幹部の問題についての引継は一切なかった。

(17)10年9月18日
○元県幹部が内水面漁業協同組合連合会を訪問し、県内水面種苗センターが内漁連に運転資金として貸し付けている資金の一部を一時返済してほしい旨申し入れ。

(18)10年9月21日
○内漁連から元県幹部の口座に1500万円振込。

(19)10年9月下旬
《行政対応》
○川村商工労働部長が河野副知事に報告。
・員外、限度超過、無担保であることは報告を受けたが、違法なものだという説明は受けなかった。(副知事)
・9年から返すことが先決ということで対処してきているので、その考えで行くしかないと判断した。(副知事)
・河野副知事は、この時に本格的に報告を受けたと答弁したが、川村部長は、副知事には引継の時には報告していないが、9月まで報告していないということは絶対ないと答弁。
○前田商工政策課長が元県幹部に面談。
・金融監督庁ができて非常に厳しい状況になってきたので、早急に返済してほしいということを要請。

(20)10年10月
《行政対応》
○知事から河野副知事に対して、都築問題についてはよろしく頼みますという話があった。
・副知事が、今までどおり返させるということでいきますと言うと、知事はわかりましたという返事だった。
・返済されたという報告がなかったので、相変わらず借金が続いているのだろうという認識があった。(知事)
・人事では元県幹部の問題をきちんとしてくださいという気持ちで言った。(知事)
・返させることが既定の方針ということは認識していなかった。 (知事)

(21)10年10月24日
○元県幹部が須崎市の造船会社社長に対して、うそを言って融資を依頼。

(22)10年10月29日
○造船会社社長から元県幹部の口座に1500万円振込。

(23)10年12月18日
《行政対応》
○河野副知事が元県幹部と面談。
・知人の企業経営者に貸しているが、確実に返済してもらえる。
・景気の回復が遅れているので滞っているが、引き続き努力する。
・貸した相手のことを聞いても、口を閉ざして言わなかった。

(24)10年12月25日
○商工政策課が四国財務局と定例協議。
・この時に初めて元県幹部への貸付について詳細に説明。
○元県幹部から内漁連に1500万円返済。

(25)11年1月28日
○元県幹部が嵐人事課長に退職願提出。
・貸した知人に逃げられて回収できない。
○元県幹部が森光海洋局長に退職願を提出したことを報告。
・森光局長はこの時に初めて事件のことを知り、河野副知事と嵐人事課長に話を聞きに行った。

(26)11年1月29日
《行政対応》
○河野副知事が元県幹部に面談。
・12月に聞いたときと全然話が違っており、もうだめだと判断。
・退職願を保留し、担保の検討を指示。
○河野副知事から嵐人事課長と川村商工労働部長に面談の結果を報告。
・返済不能ということで完全に懲戒事由に該当。
・高知商銀に対しては、引き続き債権回収の指導を行うよう指示。
○河野副知事から森光海洋局長に電話連絡。
・退職願は海洋局長預かりとする。

(27)11年2月17日
《行政対応》
○河野副知事が橋本知事に本格的な報告。
・高知商銀から無担保で5億数千万円の借入。
・懲戒免職に該当するので、受理せず預かりとする。
・高知商銀については事業譲渡を検討中。
・橋本知事は、地域経済の混乱を防ぐことが大切と考え、事業譲渡が円滑に進むように最善の努力をするよう指示。

(28)11年3月4日
○元県幹部から森光海洋局長に顛末書の提出。
・森光局長から河野副知事に提出。

(29)11年3月5日
《行政対応》
○嵐人事課長が元県幹部から事情聴取。
・この時に初めて大豆の先物取引を行っていたことが判明。
・友人や知り合いの企業経営者からも借金していたが、その分は全て返済。

(30)11年3月15日
○元県幹部が高知地検に自首。

(31)11年3月16日
《行政対応》
○県が元県幹部を懲戒免職処分。
・懲戒理由「虚言を弄して金融機関から多額の借金をし、返済不能に陥ったことは、県職員の重大な信用失墜行為にあたる。」
・川村商工労働部長から懲戒委員に対して、現在高知商銀の事業譲渡の話が進んでおり、微妙な時期なので、事業譲渡が決まるまでは伏せておいてほしい旨依頼。

(32)11年3月23日
○県が定期人事異動を発表。

(33)11年4月20日
○高知商銀専務理事が自殺。
○県警が元県幹部を須崎の造船会社社長に対する詐欺容疑で逮捕。

(34)11年4月26日
○高知商銀が理事会で広島商銀への事業譲渡を決定。

(35)11年4月28日
○広島商銀が理事会で高知商銀の事業譲り受けを承認。
○県が高知商銀の広島商銀への事業譲渡を記者発表。

(36)11年5月10日
○高知地検が元県幹部を須崎の造船会社社長に対する詐欺容疑で起訴。
○橋本知事が記者会見。
・責任はすべて私にある。
・あまりにもこの職員を信じ切っていた。
・捜査が終わり、全容が明らかになった段階で、私を含め責任をとりたい。

(37)11年5月14日
○県議会5月臨時会で「知事に対する問責決議」を賛成多数で可決。

(38)11年5月15日
○県警と高知地検が県庁(商工労働部、海洋局)と高知商銀を背任容疑で家宅捜索。

(39)11年6月17日
○初公判で元県幹部が起訴事実(詐欺罪)を全面的に認める。

(40)11年7月3日
○高知商銀の通常総代会で、広島商銀への事業譲渡について合意。

(41)11年7月6日
○県警と高知地検が背任容疑で高知商銀前理事長ら4人を逮捕、元県幹部を再逮捕。

(42)11年7月12日
○森光海洋局長、報道機関の記者から、元県幹部が(財)内水面種苗センターの公金を一時流用していたことを知らされる。

(43)11年7月24日
○高知商銀が元県幹部、前理事長、前専務を背任容疑で告訴。
・担保をとらずに5億円余りを融資し、商銀に損害を与えた。

(44)11年7月26日
○高知地検が高知地裁に元県幹部と高知商銀前理事長を背任罪で起訴または追起訴。
・2人は前専務と共謀し、元県幹部の利益を図る目的で9年4月1日、1億5000万円を不正融資し、全額焦げつかせた。
・常務など3名は処分保留で釈放。

(45)11年8月13日
○県警が高知地検に元県幹部と高知商銀前理事長を追送検。
・起訴済みの1億5000万円を除く3億7500万円についても背任容疑で追送検。

(46)11年8月19日
○高知地検が元県幹部と高知商銀前理事長を背任罪で追起訴。
・1億5000万円を除く3億7500万円の分。
・常務など3名は起訴猶予処分。

(47)11年8月31日
○橋本知事が一連の不祥事の責任を取り、専決処分によって「知事等の給与、旅費等に関する条例」を一部改正し、9月から3カ月間、自らの給料を全額カットすることを決定。