目次へ 前ページへ 次ページへ


第3 まとめ

当委員会は、事件の真相を究明するため、10回にわたり委員会を開催し、当時の責任者である知事以下の県幹部職員や前副知事等の参考人の出席を求め、慎重な調査・審議を行った。
その結果、この事件は元県幹部が犯した前代未聞の大事件であり、また県の職員というよりも人間として守らなければならない倫理観が欠如した極めて特異な事件であることが判明した。
また、県がこの事件の概要を把握した後の行政対応に極めて重大な問題があり、このことが事件の早期解決を遅らせ、むしろ事件の拡大を招き、県民の県政に対する信頼を根底から損なうという深刻な事態を迎えることになった。
その主たる原因は、県の人事管理、組織管理、情報管理、危機管理、業務の進行管理等に重大な欠陥があり、当時の責任ある立場の者がだれ一人その職に見合う責任と義務を全うしていなかったことによる。
具体的に言えば、県が9年10月に事件を把握してから12月に退職願が撤回されるまでの間において、県は既に、

・元県幹部が指導監督する立場にある高知商銀から、員外貸付など法令に違反し、また無担保で5億2500万円の借り入れをしている事実
・何度も償還期限を延期しながら、返済が全くされていないこと
・借り入れ理由等の矛盾
・又貸ししているとする企業名は言えないこと

など、元県幹部に対する信頼を覆す事実を数多く把握していたにもかかわらず、情報の共有ができなかったことや違法性の認識の相違等により、重要な初期段階 で県としての対応方針について重大な判断ミスを犯した。この判断ミスが事件の解決を遅らせ、また事件の拡大につながった。
この事件の異常性や事件に対する県の対応の不手際により県民が抱くこととなった行政に対する極度の不信感は、県として極めて憂慮すべき事態である。
このような行政不信を招いた県の責任は極めて重大であり、この事件に関係した幹部職員については、それぞれの職責に応じた管理監督責任や職務義務違反の程度に見合った厳正、かつ県民の納得する処分を行うことを要請する。
最後に、県は今後、当委員会が指摘した問題点や責任問題、再発防止対策などを踏まえ、また自らも謙虚に反省のうえ、事件の背景や原因を徹底的に分析し、総合的かつ、抜本的な対策を早急に樹立すべきである。
そして、これを職員一人ひとりの確固たる決意のもとに、組織を挙げて着実に実行し、一日も早く県政の再建に全力で取り組み、県民の信頼回復に努めるよう強く要請する。